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第 72 話

ラジオパーソナリティー

[今回の書き手]嘉大雅さん
2018.10.01

ラジオを聴いたことがなかった私は
今、ラジオパーソナリティーをしている。

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伊良部で育った。
人口は約5000人、
車で1時間で一周出来る小さな島なのに、
漁村の"北区"と農村の"南区"と
それぞれの地域に全く異なる
独特な文化と方言がある。

今でこそ、伊良部大橋が開通したことで
全国の人に認知されている島だが、
ちょっと前までは"知る人ぞ知る"島だった。

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そんな島で18歳まで過ごした私は、
大学進学を機に島を離れた。

はじめての都会での生活に
ワクワクがとまらない少年を待っていたのは
貧乏で、灰色の毎日だった。

学費は奨学金、生活費はアルバイト。

とにかくお金がなく、
電気代節約のため
ブレーカーの主電源を切り、
ガス代節約のため
春夏秋冬 真水で風呂に入り、
食事代節約のため
りんご1つで一日を乗り切っていた。

こんな苦しい思いしてるんだから、
実家暮らしの人になんか負けない!
という意味不明な反骨精神で
過酷な就職活動を乗り切り、
アナウンサーとして
琉球放送から採用を頂いた。

そして私は現在、
自分のラジオ番組を持っている。
毎週土曜のお昼に4時間半の生放送。
調べてみると、4時間半もあれば
沖縄の那覇空港から
北海道の帯広空港まで行けるらしい。

歴戦のメール職人達から送られてくる
ユーモアたっぷりの一通に、
脳みそフル回転 アクセル全開で返す。
生放送は録り直しなしの真剣勝負だ。

だから放送後は
声が出なくなるほど消耗する。
でも、この感覚がたまらなく楽しい。
入社するまで知らなかった喜びだ。

ラジオに出会えて良かったと感じるし、
これからも関わっていきたい。

「ラジオは喋り手の人生を写す」

とはよく言ったもの。

経験することや五感で感じること、
私に関わってくれた人の想いや言葉、
全てが、
私のパーソナリティー(人間性)になり、
私をパーソナリティー(喋り手)にする。

伊良部島で過ごした日々も、
貧乏な大学時代も、
アナウンサーとして一歩一歩...。


そしてこの間、私は親になった。

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まだまだ、浅い人生。
これから深みを増していく。私も、番組も。

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嘉大雅さん
嘉大雅YOSHIMI TAIGA

嘉 大雅
琉球放送株式会社 アナウンス室。
伊良部島生まれ。

次回の書き手は
川野良蔵さん

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