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第 60 話

夫婦間DJ観

[今回の書き手]DJ PINさん
2017.10.01

僕は会社員として仕事をしている傍ら、DJとしても活動しています。

DJやクラブと聞けば、なんとなくメディアからの影響もあって、
僕のように家庭をもった父親には程遠く、
あまりよろしくないイメージが先行する方もいるかもしれないですね。
しかし僕の場合は家族や会社の応援もあり、楽しくそして健全にDJと向き合えています。

特に妻の理解がありがたい。

僕よりも4つ年上の妻の理解は、90年代の多感な時期をファッションと音楽があふれる
ストリート界隈で過ごしてきた・・・という過去の経験が大きな理由だと思います。
それは現在も進行形で、今年43歳になる妻は今も酒と音楽とファッションを追い求めて
友人たちと共に夜の街へと楽しそうに羽ばたいて行きます。
それが彼女の活力にもなっているようです。

90年代の国際通りは毎日地元の若者で賑わっていて、
ダンサー、BMXライダー、スケーター、など様々な才能があふれた、
いわゆる【イケてる奴】と言われている人達がたくさんいました。
ネットも普及していない当時の沖縄では、彼らのファッションや聴いてる音楽、
すべてが教科書みたいな感じでした。
そんな中で遊んでいた妻や妻の友人たちは現在40代。
クラブや音楽からは足が遠のきそうな年代ですが、
彼らはパワフルに楽しんでいてとても刺激を受けます。

一方僕は僕で、DJとして県内を中心に活動しています。
DJと言ってもクラブで曲をかけてお客さんを躍らせるというだけではなく、
僕に関して言えば、DJ用のトラック(曲)を作ったり、
自足でレコード店を巡ったり、打ち合わせ、選曲など、仕込みが大変な作業です。
中でも「選曲」は実にスリリングでストイックな作業だと毎回感じます。
スリリングでストイックというのは、1曲で場を台無しにしてしまう場合もあれば、
大勢のオーディエンスを盛り上げる事もできる紙一重という理由からです。
大ネタと言われるヒット曲を並べれば良いというモノでもありません。
そんな事を考えながら、選曲したセットがぴったりハマった時の興奮こそが、
DJの醍醐味であり、僕がDJを続けている理由かもしれません。

近年デジタル化が進み、PC1台でDJが出来るスマートな時代に変わってきました。
それにも関わらず僕は未だにレコード盤を使い、大荷物を持ち運び、DJを続けている。
(レコード盤を使っている理由は、単純にデジタルに疎いというだけ)
今や膨大となってしまった数のレコードの中から、
そのパーティーごとのイメージとプレイ時間分の曲を
1曲1曲選ばなければなりません。
そんな集中力のいる作業中に、2人の息子の世話や家事をこなした後、
夜の街へと繰り出し楽しんで来てくれる自立した妻の存在は、
とてもありがたいと感じます。
そしていいバランス感覚だなぁと思います。
僕はお酒も飲めず、どちらかというと人付き合いもそんなに得意な方ではないので、
妻は僕にとって大事な情報源でもあります。

歳を重ねるごとにどんどんのめりこんでいく「DJ」。
年齢を重ねるからこそにじみ出る説得力を大事に、
DJとしてこれからもたくさんの人の心を揺らす事が出来れば幸せだな~と思います。
そして老若男女問わず、自立した夜遊びを楽しみ、音を楽しみ、
パワフルな行動力を持つ大人が増えていってくれたら最高です。

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DJ PINさん
DJ PINDJ PIN

1979年 沖縄県浦添市で生まれ育つ
1995年 16歳でDJを始め、その後さまざまなDJコンテストに積極的に参加。
2013年 世界最大のDJコンテスト【DMC】のジャパンファイナリストに選出。
     沖縄代表として好成績を収める
2014年 Virgin Babylon Recordsより初の単独音源【first expression..】を
pin_pknw名義でデジタルリリース。

現在はクラブDJの傍ら、スクラッチやジャグリングの技巧を凝らし即興音楽として奏で、ジャンルレスな表現者たちとのセッションも精力的に行っている。

次回の書き手は
アキ首里城さん

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