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第 37 話

うつわ屋の考える食育

[今回の書き手]八谷明彦さん
2015.09.01

壺屋のヤチムン通りから、農連市場へ向けて少し歩いた場所で、
県内外の表現的な現代陶芸作家専門のうつわ屋を開いております。

うつわ屋は「食」にとても 近い生業であります。
そして食事というのは、あらゆる意味で暮らしの要にあたるものです。
今回は、うつわ屋の視点から「食育」を考えてみようと思います。

通常語られ易い栄養摂取についてだけが「食育」ではなく、
食事の時間を通してさまざまなことを学び、
沢山の喜びを感じることが肝要だと思っています。

「食育」という観念を我が儘勝手に拡大解釈して、
食卓廻りで起こるあらゆる事柄の中から特に子供への「うつわ」による
作用についてお話しさせて貰おうと思います。

僕のお店では、ある程度の年齢に達したお子さん達には
店にある陶器を触ってもらっています。
親御さんの中には、子供を陶器に近づけることを極端に怖がり
「駄目っ!触らないで。」とか「お願いだから、ジッとしていてっ!!」と
仰るかたもいらっしゃいます。

ところが、僕の経験上 就学児童(幼稚園年長~小学校)ともなれば、
取り扱いを教えてあげると実に丁寧に「うつわ」を取り上げ、
そして楽しそうに(興味深く)観てくれるものなのです。

親の先入観から頭ごなしに「子供には無理」という決め付けしてしまう事で、
お子さんの感性が伸びる機会を奪ってしまうことにも成りかねません。

また「小さいお子さんに陶器を触らせると割れてあぶないし勿体ない」という理由で
プラスティック製の器を使わせる御家庭もあると思いますが、
放り投げても壊れる事の無いプラスティック素材に慣れてしまうということは
平気で物を乱暴に扱うことを覚えてしまう危険性をもはらんでおります。

例えば、お子さんに陶器を使わせて壊すことがあったとしても、
そのことで「物は壊れる」ということを知ることに成ります。
そんな折にこそ丁寧に扱うことを教えてあげればよいのでは無いでしょうか?

僕の店の常連さんの中には
「小さい頃から作家物のうつわを日常的に使うことをさせていた御蔭で、
モノの取り扱いがとても丁寧にな りました。」
とお子さんの成長を報告下さる方もいらっしゃいます。

そして作家物のうつわの持つ個性的な表現を食卓へ取り入れることで
食事が2割増(?)ほどに美味しく思えて、
味気ない工業製品の食器では感じ得ない豊かな時間を持つことが可能になるのです。

●陶・よかりよ
http://yokariyo.com

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八谷明彦さん
八谷明彦Akihiko Yatagai

陶・よかりよ 店主。
那覇市壺屋の片隅にて、表現的現代陶作家によるうつわ屋を開く。
1956年生 神奈川県出身

2001年 沖縄県へ引っ越す
2002年 那覇市前島に art & craft よかりよ をオープン
2009年 那覇市壺屋へ移り 陶・よかりよ と成る 。

次回の書き手は
久高悠三さん

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