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第 22 話

沖縄に育ててもらったもの

[今回の書き手]近藤ヒロミさん
2014.06.01

カリンバ、ムビラ、親指ピアノと呼ばれるアフリカの民族楽器を10種類位鞄につめて日本じゅう旅をする。

今回は島根県隠岐の島スタート。ケニヤからスラムでストリートチルドレンの学校を運営している早川千晶、岡山からパーカッショニストの大西マサヤ(11月 には沖縄でも公演予定) 3名で車に楽器、音響機材、販売グッズを詰め込みほぼ休みなしの50日間。そして私が帰ってくるのは娘と"音"を育ててくれた沖縄。

23年前、鞄二つで逃避行。沖縄出身の友達が妊娠7ヶ月の私を心配して、一週間同行してくれた。

北中城に古い民家の離れを借り、住み始めた。ガランとした家にポツンと一人。20代の半分をアフリカで過ごし、ひとりでへんぴな所も旅したけれど寂しいと思ったことはなかったのに・・・。友達もいない、お金もない、帰るところも無い・・寂しかった。

でも時間だけはいっぱいあった。

毎日毎日何時間も歩き回った。植物、家の作り、看板、ふっと時空の曲がる裏道、音、光、空、風、におい、海、そして人・・・。五感で感じるすべてが新しく、おもしろく、懐かしく、不思議な感覚・・。

近所のおばちゃん達がうちをのぞいては、"何も無いねー、このうちは"と言っていろいろ持って来てくれた。食器、ラジオ、机、テレビ、野菜etc・・。"子供がいれば大丈夫さぁー"と肩をたたいてくれた。

出産で入院中に"いくさ世を生きて"という沖縄戦を生き抜いた女性達の本を読んだ。あまりに壮絶で今の自分なんか、"何も問題ない"と思った。沖縄戦のこと、今でも続く基地問題をほとんど知らないでいたことが恥ずかしかった。

娘が産まれると演奏活動を始めた。毎月赤ん坊連れでライブさせてくれたライブハウス"モッズ"の喜屋武さん、スタッフの方々、お客さんは本当に温かく優しくかった。

親指ピアノはきれいな音色だけでなく、はずれた音、ずれた音もいい。ふつう雑音と思われるさわり音も大切な音。

力強いアフリカから預かり、優しい沖縄で育ててもらった"響き"を届けに旅をする。

今年2月久しぶりにアフリカへ行った。30年近く前に登ったキリマンジャロを眺めながら思った。

うん、けっこういい55歳かも。

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アフリカの民族楽器

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楽器を作る

近藤ヒロミさん
近藤ヒロミHiromi Kondo

東京生まれ。東京芸大鍛金科、ケニヤスワヒリ語学院(JACII )卒業。
アフリカの民族楽器、親指ピアノ奏者
ソロの他、ディンカドゥンク、アマナ等バンドで活動。
CD『タピワ』『ディンカドゥンク』『アマナ』『ドリーミングジュゴンオブヘノコ』etc
玉城に”うさぎ小屋″ギャラリー&カフェオープン(不定期営業) 。

次回の書き手は
翁長晴樹さん

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