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第 23 話

沖縄のハーフとその言語

[今回の書き手]翁長晴樹さん
2014.07.01

 国際化が進んでいる今日では、国内にいる外国人を見てもそう珍しくはない。まして基地をどでかく構えている沖縄では当たり前のように、沖縄の日常に彼らは溶け込んで生活している。今回はその彼らについて書いてみようと思う。
 私には身近に二人のハーフがいる。ハーフと言っても、どちらも片親が日本人で日本に生まれ、日本国籍を持っており、当然日本語もペラペラなのである。い や、それどころか、流暢な方言まで心得ているのだ。一見してみると、黒人のルックスを持ち、日本人とは明らかに違った雰囲気を放っている彼女らが、蓋を開 けてみると「やーはよこうだからダメだばーよ」などといった明らかに若年層よりもナチュラルに方言を話すのである。少し面白い。
 そもそもこの二人と知り合ったのが、学生時代、お互いの共通の友達や趣味を通じ徐々に仲良くなり、今に至るという訳である。当時私は英語のヒアリングが大の苦手であり、読解は得意だったものの、生の英語となると瞬時にお手上げであった。そんなある日、何の用だったかは忘れたが、このハーフの友達が私の隣で、電話越しに流暢な英語で会話しているのだ。見た目に相応な英語、そして日本語と、二カ国語も喋れるのだ。驚いた驚いた。それに加え、方言である。沖縄 で職に困る事はまず無いだろう。そんな一方、私は案の定会話が全く理解出来なかった。三分弱の会話で様々な単語が飛び交う中、聞き取れた単語は 「what」だけである。そんな単語、小学生でも聞き取れる。
 このバイリンガルの差にショックを受けた。同年代にし、日本語に加え英語、さらに方言である。もしかすると密かに中国語やフランス語も心得てるのかも知れぬ。のんきにボンジュールなどと言ってる場合ではない。私は猛烈に勉学に勤しんだ。耳をよくする為には生の英語と思い、ブリトニー・スピアーズのCDを 買った。しかもベスト盤である。収録数は他を圧倒しており、その分私の期待も膨らんだ。あまり効果は無かった。体が踊りだそうとする。良くない。次に洋画を観た。日常会話から慣れてみようと思い、バイオハザードを借りた。だがしかしどこのネイティブスピーカーが、私の為にゆっくり喋るだろうか。速すぎる。 喋るスピードが速すぎるのだ。おまけに内容が気になりだし、とてもヒアリングどころでは無い。結局、映画の中のマットは私に何を伝えたかったのだろうか。 確信に至らぬままDVDは虚しく返却されたのであった。
 このように様々な鍛錬を積み重ね、私はようやく若干英語が喋れるようになった。今では、仕事でもほんの僅かだが、英語で接客出来るほどである。これも彼女 達のおかげと言っても過言ではない。英語を話すという事すらしなかったあの頃。私のいた環境は甘かったのだ。本人達にも聞いたが、小さい頃は、外見の事か らいじめなどにもあったようで、そんな彼女達救っていたのも、同じ境遇の彼女達であったのだ。
 もちろん今回のハーフが黒人ではあるだけで、白人もアジア人 も全て同じである。近年、基地に勤めている軍人問題がかなり多い。ひょっとしたら外人というだけで苦手な方も中にはいるかもしれないし、私のエッセイで、 気を悪くした方もいるかも知れない。ただ、知っていて欲しい。今、日常の風景に溶け込んでいる彼女、彼らは外見は違えど同じうちなーんちゅである。必ずし も英語が喋れる訳では無いし、日本語も上手くないかも知れない。だが何だかんだで、みな沖縄に住んでいるのだ。彼らは私たちが思っている以上に、沖縄が好きであり、そして関わりを持とうとし ているのではないか。ここは、昔から教えられているうちなー精神で温かく受け入れてみてはいかがだろうか。するとまた、三味線が奏でる音色や、かちゃーしーの陽気な調べが、微かにどこからか聴こえてくるかもしれぬ。

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世界を広げてくれた良き友たちと・・

翁長晴樹さん
翁長晴樹Haruki Tomoki

1991年 沖縄生まれ。 
生まれも育ちもずっと沖縄。現在は美容関係のメイクを施術する仕事に就いている

次回の書き手は
玉那覇愛さん

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