迷いながら生きる喜び

　私は沖縄とは全く気候の違う、山形で生まれ育ちました。実家はお菓子屋と骨董屋を営み、駅のデパ地下にお店があったため、両親は３６５日朝～晩まで休み無しで働いておりました。今考ても、本当に頭が下がります。工場は家にあったので、いつもお菓子を作っているのが見れました。骨董屋も始めていたので、家には絵画や掛け軸、彫刻、焼物、楽器、剥製やら何やらと謎の品々が、所狭しと沢山ならんでおりました。茶の間には、何をしに来てるのかわからないお客さんがよくいました。学校から帰ると、家の人は働いていてそこにはいないのに、お客さんがお客さんにお茶を出したり、お帰りーと私を出迎えてくれる、面白い家でした。
　そんな生活をしているころ、私は、ラジオから流れて来る沖縄の音楽に凄く心を奪われました。独特の音階、サンシンの音色、とても神秘的でした。いったい沖縄ってどんなところなんだろう～、インターネットのないあの時代、毎日ひたすら想像をめぐらせていました。
　
　やはり、家の環境もあったせいか、私は小さい頃から美術が好きでした。器用ではありませんが、作る事に没頭するのが好きでした。芸術は好きだけど、それでは生活出来なそうだし、と、デザインを勉強するため東京で一浪していました。受験も近づいたある日、"彫刻って素晴らしいな"と 思う作品に出会い、それならば、あのとても気になる沖縄へ行こう！！と、沖縄芸大彫刻科へ入学、それから26年目、すっかり沖縄にも彫刻にものめりこんでしまいました。　　　
　彫刻をやっているとはいっても、これで生活出来ているわけではなく、他のいろんな仕事をやりつつなんとか生活しているといった状態です。主にデイゴの木を使って彫刻するのが、好きですが、石も粘土も布も紙も時々は髪の毛も使います。出来ればこの世にある全ての物をつかいたいなと思っています。彫刻というか、表現方法はさまざまで、平面だったり、立体だったり。最近は、木工や陶芸などもやっています。スタイルを決めず、作りたいものに合わせて素材や手法は変えたいし、自分がやったことのないものにもどんどん挑戦していきたいと思っています。

　制作場所は主に家の庭です。
　屋根がないので、その日の天候に合わせて作業内容を変えざるをえなくなることも度々あります。
　また、太陽と共に日影は移動していくので、私の制作場所もそれに合わせて移動しなければなりません。そんな作業場は、せわしないのですが、庭はとても気持ちがよく、"うわーあの沖縄にいるんだな"といつも感動しながら制作できています。
　近所の人が野菜を持って来てくれたり、通りがかりの人がのぞきにきたり、子供や動物が遊びに来たりと、なかなか賑やかです。

そんな感じで和やかに制作している私ですが、いったん作業に集中すると、食事も寝る間も惜しんで制作に没頭してしまいます。どんなばかくさい作品を作っている時でも、納得いかないと、何度も何度も作り直したりして、まるでとり憑かれたようになったりすることもあります。自分でも、おかしいんじゃないか、って思います。と、その一方で、いったい自分は何がしたいのだろう、自分は何をやっているのだろう、という疑問がいつもつきまとっています。そもそも、制作とかしない方が楽に暮らせていけるのではないのか、、、とも考えます。まして、頼まれてるわけでもない、使えるものでもない、へんてこなもの作ってるわけだし。
　しかし最近、自分の中で何か変わってきたな、と思う事があります。
　年とって、吹っ切れてきたのか、開き直っているのか。"別にやらなくてもいいのでは？とも思ってる制作は、やめられないし、やめるどころか意欲は増している様な気もするし、、しかたがない、やるしかないな"と。
　以前よりも、もっと制作中心になるように生活スタイルを変えているところです。（おかげで生活はさらに厳しくなりますが、、）。
　自分自身、これから先、どうなっていくのかさっぱりわかりませんが、迷い続け、疑問を持ち続けながらも、制作していきます。
そして、それが許されるって本当にありがたいことだなと思っています。私がこんな生活をしていけているのは、家族や友人、皆様の支えがあるからこそです。この場を借りて、全てにお礼を言わせてください、本当にどうもありがとうございます。

奥山さんが創りだす不思議な世界

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