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第 44 話

自分が志す仕事

[今回の書き手]近藤逸志さん
2016.04.01

ちょっとだけ、Boulangerie i+plusについて語らせていただきます。卸販売から、始めると早8年。
ひとりでパンやお菓子を創ることがアイプラスのこだわり。
理由は最初から、最後まで責任を持った仕事をする為に。
ブーランジェは直接、作っているものを手で触れる仕事がほとんどです。
手は千差万別で手の温度や力加減、器用不器用もあるし、酵母は生きものなので手から、伝わる感情も大事です。
「創る」は人が多くなればなるほど、ばらつきが生じ、
言葉では理解しづらいパン創りにおいての価値観を共有することは難しい。
そこに妥協したくないから、ひとりで創る、
アイプラスのパンは自分の自己満足と自分を表現して初めて生まれる存在意義をカタチにしたものなんです。

そこにはうちが仕入している沖縄で本気で素晴らしいものを育てている
農家さんや農場さんの想いを伝える役目もあります。
例えば、今帰仁村のたまご農場には人間社会を縮図したような鶏世界があり、
ルールの中で食べて、遊んで、眠る。卵を産みたくなったら、自分の気に入った場所にて産む。
そんな、鶏たちが産んだ卵は健康的で味、栄養価ともに優れカスタードクリームにすると絶品です。

うるま市のレモン農家さんのレモンは無農薬で皮ごと安心して使える、鮮烈な酸味と香りは自己主張が強く、
どんなお菓子にしても個性的に仕上がる。
森岡いちご農園の苺は高貴で香り高く、水分が少ないので味は濃く、
通常販売されている苺とは一線を画する。
県産小麦は肥窒素を使用していないのでグルテン量は少なく、
扱いは難しいですがとにかく新鮮で味の面に優れ、安心できるパンには無くてはならない食材。
その他にも糸満市の無農薬マンゴー、うるま市の自然栽培トマト&有機栽培メロンなど、
沖縄には本物の食材が溢れていて、そんな沖縄を誇らしく想う、そんな農家さんは沖縄の宝であり、誇りです。

まだ見ぬ、宝物たちに今年はいくつ出逢えるか楽しみだ。
とにかく素晴らしい食材なのでうちは農家さんの言い値で購入しています。
お互いが良い関係でずっといられるように農家さんが豊かになってくれないと困ります。
なので利益だけを考えたら、はっきり言ってお店では使えません。
「自分が食べたい、自分の大切な人に食べてもらいたい。」から、使い続けていく、これもまた自己満足なんです。


結局、自分のやりたいことを貫きたいなら、作りたいの作ればいいし、使いたい食材を使えばいい。
変に媚びたり、自分を偽ったり、人に言い訳はしたくないから、胸を張れる商品を作ることを目指す。
私自身、食の職人として、もっともっと伝えていかければいけないことがある。
食の安全を確保することが難しい世の中になった今だからこそ、食のプロとして、やるべきことをやる。
本物か?偽物か?を知るのも職人。食材の見極めを知るのも職人。仕事の善し悪しが分かるのも職人。
職人の声ほど、説得力のあるものはないと信じております。
自分に自信があれば、食で伝えたいことは伝えられる。
必ず未来は変わります。食に携わる仕事はとても重要な仕事、生きるということは食べるということ。
食が身体をつくる、だからこそ、身体に良いものを食べてください。
10年、20年後の子供たちへ言い訳をしない嘘をつかない生き方を今しなきゃ、かっこ悪すぎます。

この先もパン屋だから、できることを発信していければと思います。

Boulangerie i+plus 近藤逸志

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国頭村産森岡いちごのタルト・フレーズ

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今帰仁村産アローカナ卵のガトー・バスク

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うるま市産リスボンレモンのウィークエンド

●Boulangerie i+plus
http://iplus.ti-da.net
沖縄県うるま市栄野比154
Tel 098-989-0616
営業時間/10:00~18:00
定休日/日・月曜日

近藤逸志さん
近藤逸志Kondo Itsushi

父が熊本、母が沖縄の島ナイチャー
幼少期は大阪で暮し、小学校2年に現在、お店を営んでいるうるま市に移り住んだ。
子供の頃から、食に興味があり、勉強そっちのけで料理を作ってました。
小学校高学年には料理人になろうと決めたぐらい、食に没頭(笑)
中部農林高校の食品工業科卒業後、大阪にて、パティシエ修行をスタート。
7年後ブランジェリーに転向。10年間で大阪、東京、名古屋と
渡り歩き、今年で24年間この仕事に従事。
人生の転機で沖縄に戻り、紆余曲折ありながら、Boulangerie i+plusを開店。

次回の書き手は
謝花慧さん

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