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第 33 話

考えて、作って、売りたいの

[今回の書き手]岸部健太郎さん
2015.06.01

5年前に沖縄に移住するまでの12年間、東京のアパレルメーカーで勤務していました。
経験を積むほどに、あるひとつのビジネススタイルを、理想として抱く様になります。
それは、取り扱う商品を

「自分たちで考えて」
「自分たちで作って」
「自分たちで売る」

という事。
だって「全部やってます!」って言えるの、カッコ良く無いですか?
(あれ?単純すぎ?僕だけ?)

でも実際には、そのビジネススタイルを形にするのって、かなり難しいんですよね~。
いや、難しいというよりは、どこかの工程を、その専門の会社にお願いした方が、ビジネスとしては圧倒的に効率が良い(だからこそ、メーカーや工場やセレクトショップが存在する)と言った方が正しいかも知れません。理想は抱くけれど、なかなかそれを実現出来ないジレンマを、お酒でかき消す日々を過ごしていました。(本当に毎日飲んでた!!)

ところがある日、沖縄の得意先の会社で目にした衝撃的な光景が、私の人生を大きく突き動かす事になります。先にネタばらしすると、その得意先こそ、私が5年前に転職した「ハブボックス」というお店を県内に4店舗(当時は3店舗)展開している(株)プロジェクト・コアという会社なんですけどね。前々から商品は見ていたので、優秀なデザイナーが沢山いる事は知っていました。ただ、読谷村にある本社へ、営業に行った時の事。商談を終えて玄関を出ると、何やらカシャンカシャンという機械音が聞こえました。ふと音のする部屋を、窓の外からを覗いてみると、たくさんの職人たちが、頭にタオルを巻いて、せっせとTシャツにプリントをしているじゃありませんか!!

えーーーっ!!!自分たちでTシャツ作ってんのーーー!!??

もちろん、私も長く同じ業界にいましたので、製造工場を見学した事は何度もありました。ただ、当時全国に200件近くの得意先を担当していましたが、自分たちのお店で販売する商品を、しかもかなり本格的な設備で、製造している光景を目にするのは初めてで、衝撃的すぎて鳥肌が立った事を今でも覚えています。

また、その会社は、社長が名嘉ボクネンという版画家で、アパレル部門の他に、彼の作品を扱うアート部門も存在するのですが、その工房を見学して、私はさら に驚きました。額装された作品を梱包する為のダンボールの「箱」をその作品のサイズに合わせて作っていたんです。(1枚の段ボール板をカットして作る、本格的なやつです。)

普通、作りますーーー?箱ーーー!!

そして、手作りされた商品や作品を、お店の販売スタッフが、せっせと自分のお店へと運んでいく姿を目にして、私は確信しました。「これだ!!」と。

そこからはもう想像に難くないと思います。募集もしていないのに「何でもやるから」と頼み込み、足繁く沖縄に通っては、面接をお願いして、見事(というより、かなり強引に?)転職にたどり着きました~パチパチパチパチ~ッ。この猛烈な転職&移住劇には 、家族や友人、今の同僚達も目を丸くしたと思います。「なんだコイツーーー!?」みたいな。

そこから早5年。アート部門の担当を経て、現在はアパレル(HabuBox)部門でマネジメントの仕事をしています。
今日ももちろん、読谷プリント工場はフル稼働しています。また、併設している縫製工場も、2年前に沖縄県衣類縫製品工業組合から正式に「かりゆしウエア」の認定工場としての認定を受け、念願であったかりゆしウエアの企画・製造・販売を本格的にスタートさせました。
大変ありがたい事に、ビジネスの規模が少しずつ大きくなってきており、すべての商品を自社で作るというわけにはいかず、他社のメーカーさんや工場さんにお世話になりつつも、やはり多くの商品を

「自分たちで考えて」
「自分たちで作って」
「自分たちで売る」

ことを商いとする会社の一員として働ける事を、私は本当に誇らしく思っています。そして、あの時感じた「これだ!!」はやはり間違いでは無かったと、美酒をあおる日々を過ごしております。(結局、毎日飲んでる!!)

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HabuBoxアカラ店。お店は県内5店舗。4/25には、北中城のイオンライカムモールにも新店舗をオープンした。

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この窓から見えた光景が、私の人生を大きく変えた。

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一昨年入籍し、昨年9月には第一子を授かりました!!

岸部健太郎さん
岸部健太郎Kentaro Kishibe

株式会社プロジェクト・コア/HabuBox部門マネージャー。
和歌山生まれ、東京育ち。東京でのアパレル営業を経て、2010年に沖縄へ移住&転職。趣味はBBQと首里城見学。ひとつ前のエッセイを書いていた嫁の喜納しのブーが育てた紅あぐーでBBQしながら、琉球王朝についてあなたと語り合いたい。

次回の書き手は
呉屋麻子さん

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