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第 7 話

おきなわで暮らす、出会う、つくる、つながる

[今回の書き手]宗像誉支夫さん
2013.03.01

沖縄に住み始めたのが1995年、琉球大学大学院入学のためでした。それまで訪れることも、ましてや住むことなど全く考えていなかった場所。本気で研究に打ち込みたかった私にとっては都合が良かった。逆の意味では、先入観のないまなざしと実体験で積み重ねてきたおきなわは、私にとって理想の場所でした。

沖縄移住後、最大の出来事は結婚。大学院生時代に知り合い、卒業と同時に結婚、職業は研究者、陶工、パン屋とジェットコースターな人生劇場を二人で乗り越えてきたおかげで、人生の広がりの方向がものすごく広がった。そして、妊娠、自宅出産を通してたくさんのことを学びました。私にとって自宅出産がなければ、前向きな子育ても、ましてや、友人たちと沖縄サドベリースクールを立ち上げ運営することなど想像もできませんでした。

なかでも、私にとってのパン作りは特別です。子供の頃から好きだったこと、大人になってから好きになったこと、その両方が詰まっていて、全身の感覚と感性を総動員しなければできない緊張感、常に流動的で完成することがない。それを共に作り上げる仲間がいて、喜び合える人たちがいる。

夫婦という単位で、生活、子育て、パン作り、自営業、学校運営のすべてに向き合うことで、研究者時代からずっと自分に問いかけていた「自然とは」に対する答えをたくさんもらってきました。自然原理主義ではなく、自然に自分を見つめている状態のこと。自分の中の恐れと、外で起きている出来事がリンクしていることを感じること。心の動揺は、自分の中の恐れが反応していること。

震災の影響もあって、自分が何を大切にしたいのかを明確にする作業が続いている感覚があります。そんな中、5年前に友人たちと始めたサドベリースクールの存在は大きく、全ての社会における出来事をフラットに観る習慣がつきました。今を作るのは自分たちで、今を決断するのは自分たちであること。今の積み重ねが未来であることです。

そして近頃は、面白いと思うことを素直に面白いと言えるようになってきました。今回お店の改装を通じて、現代アートに関わるトヨシマヒデキさんと一緒に仕事をして、大好きな工芸の世界からはかいま見れない自由さと価値の置き所、作品としての力を感じました。以前の私は、目に見えない敵からの攻撃を恐れて、条件を揃えないと、、躊躇することが多かったのですが、それは単に自分を守りたい、自己弁護するために理由を持っていたいという気持ちの裏返しだったのだと気づきました。

近頃は、人との出会いが本当に楽しい、はじめて出会った人にさえ、愛おしさを感じてしまうことが多い。つくづく自分は変わったと思います。目の前にいる人を本当に大切に出来たなら、人生は豊かに広がっていくのを信じられる今が好きです。

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宗像堂の石窯

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象徴的ながじゅまる

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香ばしい匂いが漂うよう

宗像誉支夫さん
宗像誉支夫Yoshio Munakata

天然酵母石窯パン 宗像堂店主
福島県出身。琉球大学の大学院で微生物の研究を行い
その後與那覇朝大氏のもとで陶工として働く。
天然酵母との出会いをきっかけに宜野湾市嘉数にパン屋さんをオープン。

次回の書き手は
渡慶次弘幸さん

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