おきなわで絵を描くこと
海辺に建つ家に暮らす。
空に大きく枝を張るガジュマルの大木があり
バナナの葉やフウリンハイビスカスや月桃が風に揺れる。
縁側に座り冬の暖かな日差しを浴びて、これを書く。
絵を描きそれを持って旅に出る僕が、帰る場所を玉城の海沿いの集落に決めたのは
ここが心も帰す場所だから。
斜めに入る冬の光線が部屋のテーブルのあたりまで伸びて来て、葉の陰を揺らす。
風はややひんやりとするが、温められた床板はじんわりとしている。
そして近所の誰かがやってくる。
赤ん坊を抱いて。果物を持って。友人を連れて。新しい話を持って。
猫がすぐ傍を通る。尻尾だけをこちらにすりつけながら。
そして他愛も無い話しをしながら海を木々を空を眺める。
そういう理由でここに暮らす。
僕の作品は旅がテーマ。
旅先の風景を描くことはあまりなく、旅の匂いや気配を描きたいと思う。
月の光が強い夜にふと道に出る。遠くまで見える様な青く照らされた道。
全身に浴びる月光が幸福を感じる、そんな絵。
バスを待つ、ただひとり。暑い日差しをよけて大きな葉の下に隠れる。
道の遠くを見るのをやめて、足下を見るとちいさな花が揺れている、そんな絵。
どこにでもありそうな、でも旅をして思い出すような、日常の非日常。
そんな気持ちにさせてくれたのも、沖縄での暮らし。
旅から帰ると、また旅をしているような気分になる。
植物を見る、野菜を買う、海辺を歩く。そういう旅を近所で始める。
おきなわで絵を描くことは、旅を見つめること。
作品の余白に物語の気配
非日常を旅して・・・
沖縄に戻り、また旅がはじまる・・・

梅原龍Ryuu Umehara
画家・詩人。
1967年富山市生まれ。現沖縄県在住。
1997年画集「月ノ人」。
2005年より毎年オリジナルカレンダーを出版。
雑誌、出版物等に挿絵、詩、布絵、エッセイなど掲載。全国各地で個展を開催。
2006年、南城市玉城に服と小物の店、さちばるまやーをオープン。
沖縄県内では2013年8月、GARB DOMINGOで個展を開催します。
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- 宗像誉支夫さん