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第 6 話

おきなわで絵を描くこと

[今回の書き手]梅原龍さん
2013.02.01

海辺に建つ家に暮らす。
空に大きく枝を張るガジュマルの大木があり
バナナの葉やフウリンハイビスカスや月桃が風に揺れる。
縁側に座り冬の暖かな日差しを浴びて、これを書く。

絵を描きそれを持って旅に出る僕が、帰る場所を玉城の海沿いの集落に決めたのは
ここが心も帰す場所だから。
斜めに入る冬の光線が部屋のテーブルのあたりまで伸びて来て、葉の陰を揺らす。
風はややひんやりとするが、温められた床板はじんわりとしている。

そして近所の誰かがやってくる。
赤ん坊を抱いて。果物を持って。友人を連れて。新しい話を持って。
猫がすぐ傍を通る。尻尾だけをこちらにすりつけながら。
そして他愛も無い話しをしながら海を木々を空を眺める。
そういう理由でここに暮らす。

僕の作品は旅がテーマ。
旅先の風景を描くことはあまりなく、旅の匂いや気配を描きたいと思う。
月の光が強い夜にふと道に出る。遠くまで見える様な青く照らされた道。
全身に浴びる月光が幸福を感じる、そんな絵。
バスを待つ、ただひとり。暑い日差しをよけて大きな葉の下に隠れる。
道の遠くを見るのをやめて、足下を見るとちいさな花が揺れている、そんな絵。
どこにでもありそうな、でも旅をして思い出すような、日常の非日常。
そんな気持ちにさせてくれたのも、沖縄での暮らし。
旅から帰ると、また旅をしているような気分になる。
植物を見る、野菜を買う、海辺を歩く。そういう旅を近所で始める。

おきなわで絵を描くことは、旅を見つめること。

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作品の余白に物語の気配

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非日常を旅して・・・

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沖縄に戻り、また旅がはじまる・・・

梅原龍さん
梅原龍Ryuu Umehara

画家・詩人。
1967年富山市生まれ。現沖縄県在住。
1997年画集「月ノ人」。
2005年より毎年オリジナルカレンダーを出版。
雑誌、出版物等に挿絵、詩、布絵、エッセイなど掲載。全国各地で個展を開催。
2006年、南城市玉城に服と小物の店、さちばるまやーをオープン。

沖縄県内では2013年8月、GARB DOMINGOで個展を開催します。

次回の書き手は
宗像誉支夫さん

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