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第 1 話

居場所から見える景色

[今回の書き手]香月礼さん
2012.09.05

『仕事場は3階です』そう言うと
そして実際に来てその思ったよりも大きな窯を見ると
大抵の人は驚いて『よくこんな民家の上に』という(笑)。

確かに設置は大変だったけれど
今にして思えばこれは大正解だった。

街中でありながら往来する車も近くの小学校から聞こえる声も
どこか遠く、一番身近な音といえば遊びに来る小鳥の声くらい。
周りとそんな心地よい距離関係が生まれているのも
この3階という場所ならでは 。

そしてここは年中風が通る。工房入り口の最も涼しい
場所にゴザを敷きゴロリと寝転がると
大きく開放された広いベランダから真っ青な空が眼面に広がる。

ここ沖縄ならではと思う心地よい風と青い空。
そんな中、一人。
その解放感が気持ちに余裕を生み制作意欲へ繋がっている気がする。

例えば今、まさに目前に控えている今回のグループ展。
頂いたお題目(テーマ)が好きな世界だったこともあって
すぐに展開したい方向が見えた。

けれど普段の生活が家族と共にすごす
あらゆる雑事事に埋もれながらの日々のせいか(笑)
とにかく何やかにやと気が散る。
邪魔されてすぐには集中できない時もある。

だからそんな時はしばらくは手を動かさずゴロンと横になる。
空にぽっかり浮かんだ真っ白い雲が速いスピードで
次々にカタチを変えていく。
さながらそれは、目の前の展示会に向けてのアイデァから
日々の雑事事 のアレコレまで
あっちへとんだりこっちへとんだり
常にせわしなく思考している私のアタマの中のようだ。

でも一人そんなことをぼんやり考えながら時間を過ごしていると
いつのまにか整理されて気持ちが集中し始めるのだ。
そうしてそこから一気に制作が始まる。もうそこは自分しか居ない世界 。
若干ネコに邪魔されつつも(笑)。

クルクルと目まぐるしく変わる天気 。
色んなものや人との距離が近く
それがよかったり悪かったり、の日々日常。

冲縄に来て十数年、そんな生活で
臨機応変や距離のとり方を柔軟に考えること。
それを学んだことが今の自分を作っている。

そしてこんな居場所が出来たこと・・。
そのことに感謝して今日も工房へ。

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工房から見える青空

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邪魔されつつ癒されて。

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今回のグループ展の作品!

香月礼さん
香月礼Aya Katsuki

福岡県生まれ。陶芸&布小物作家。1999年結婚を期に沖縄移住後、制作再開『工房香月舎』設立。2009年陶器以外,布小物での作品ブランド『カツキヤザッカ』も始動。現在は県内外の個展やクラフトフェアに出展。仕事とオカン業務、忙しくもユルく楽しく、がモットー。
9月7日(金)から18日(火)まで、宜野湾市の雑貨屋[そ]で、グループ展「おにぎりとサンドイッチに似合う器展。」開催。
http://sso.ti-da.net/

次回の書き手は
森下想一さん

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