1. TOP
  2. 雑誌の記事から / くらし / 日々のこと / ざっし
  3. 相手を想い、自分を見つめ直す 心温まる手紙のギフト

相手を想い、自分を見つめ直す 心温まる手紙のギフト

2024.03.28

A1G04620.jpgこちらは、2023年おきなわいちば VOL83「夜と朝の時間」に掲載された記事です。

 手紙にまつわる文具と雑貨のセレクトショップ「レタースタンドロロ」の岩下里実さんは、自身も手紙を書くのが好き。書くのは決まって、子どもたちが寝静まった夜だ。書き始める前には儀式というほどではないけれど、ちょっとした準備があって、家事が終わったら、 まずは音楽をかけて、自分時間へのスイッチをオン。最近はクラシックのピアノ曲やジャズピアノなどをスピーカーで小さく流すことが多いのだそう。自分のためだけにほっと落ち着く深煎りのコーヒーを淹れたら、おやつも用意して自室へ運んで机へと向かい、ゆっくりと椅子に腰かける。書く相手のことをイメージしながら便箋やマスキングテープを選び、お気に入りのガラスペンをインク瓶にひたす。書き出すとペンが止まることなく、するすると言葉が綴られていく。

「手紙を書くきっかけは、誕生日だったり、結婚や出産などの節目だったりしますが、内容は何気ないことがほとんどかもしれません。時には、便箋の色や柄から、書きたい相手が思い浮かぶこともあります。かしこまった定型文もあまり使わないですね。たまにお客さんから、手紙を書くのって難しいという声を聞くけれど、相手に対する想いが込められているなら、学生の頃に友達と手紙交換をしていたような気持ちで、気負わず思いのままに書いてもいいと思うんです」

 普段は2週間に1回、時間に余裕がある時は、毎週手紙を書く。ペンが走る日は、一気に2~3通書き上げることもあるという。岩下さんがこうやって手紙を書くことが夜のルーティーンになったのは、沖縄へ移住してからだ。

「夫の転勤で5年前に東京から来たのですが、 コロナの時期と重なっていたこともあり、知り合いのいない土地で子どもと二人っきりで家にいることに閉塞感を感じるようになったんです。そんな時に心の癒やしになったのが、手紙でした。 相手のことを想って言葉を綴ることは、自分のことを振り返るきっかけにもなり気持ちが整理されていく気がします。それと、大げさかもしれないけれど、手紙を書くことって、新しく何かを作り出すことなんだと思いました。その感覚というか、達成感も久しぶりに味わえて、なんだか私自身が救われた気がしたんです」

 自分がそう感じたように、誰かにとっても手紙を書くことが心の癒やしになってほしい。そんな想いではじめたのが「レタースタンドロロ」。作り手のこだわりを感じられるような文房具をセレクトし、約2年間、オンラインショップでの販売を中心に活動してきたが、今年の冬に実店舗をオープンすることになった。店内には、5つほどの席を置き、全て一人席にする予定。それは、お客さんがコーヒーを飲んだり、時には手紙を書いたりしながら、一人時間を楽しんでほしいという想いからだ。

「一人の時間って、誰にでも必要だと思うんです。手紙を書くことは、一人になるのにちょうど良い気がします。 今、SNSですぐにメッセージのやり取りができて人と繋がれるのは、とても便利なこと。でも、早く返事をしなくちゃというプレッシャーを感じたり、どのタイミングでやり取りを終えればいいのか分からなくなったりと、時には気を遣いすぎてしまうこともある。私の場合、対面だと言いたいことがすぐに出てこなくて、後で一人反省会をすることもあるんです(笑)。一方、手紙は、小さな贈り物のような感覚で渡すので、返事が来るかどうかはあまり気にせず、相手へ想う自分の気持ちを、自分らしく伝えることができる気がします。私にとって、手紙を書くことは、とても幸せなことですね」

岩下 里実
LETTER STAND lolo
埼玉県出身。2018年に沖縄に移住。2021年に手紙の文具と雑貨 「LETTER STAND lolo」を始める。オンラインショップでの販売を中心にイベントに出店、沖縄県内外の作品を取り扱うだけでなく、県内作家とコラボしてオリジナルのマスキングテープやメモ帳などの文房具を販売している。2023年12月に宜野湾市普天間で実店舗をオープンした。
〈Instagram〉letterstand_lolo

岩下さんの手紙を綴る夜時間を紹介したYouTube動画はコチラ
https://youtu.be/FxKv97K9Gyo?si=nHydu9XlDXdd1Iw_

  • 文・ 編集部編集部
  • 写真・G-KEN

おすすめ記事

ページトップへ