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気になる本屋へ 〜ブックパーラー砂辺書架〜

2024.03.27

 沖縄の歴史や文化を学べる、スクールバスの古書店。

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こちらは、2023年おきなわいちばVOL82「本とコーヒー、スイーツ」に掲載された記事です。

本と出会い、 人とつながる憩いの場
「地元の人たちに沖縄のことをもっと知ってもらいたい」。そんな思いから、生まれ育った北谷町砂辺にスクールバスを改装した「ブックパーラー砂辺書架」をオープンした畠中沙幸さんは、18歳で進学のためアメリカに渡り、そこで「沖縄のために何かしたい」という気持ちが芽生えた。

「沖縄に住んでいたころは、 火の神を台所に祀ったり、旧暦の行事に参加する生活は、当たり前の日常で深く意味まで考えたことがなかった。でも海外で生活したことで、あれはなんだったんだろうと興味がわきはじめ、調べていくうちに、すべて気候風土や人間の生活にとって理にかなったものだったのだと気づかされたんです。その風習が今も残っていて、生活に溶け込んでいることが、尊くてカッコいいって思いました。もっと深掘りしたくなり、 沖縄人のアイデンティティは何に由来するのかを自分なりに考え、それを卒論のテーマに選んだんです」

 卒業後は沖縄に戻り、 一度は教育関係の会社に就職した畠中さんだったが、 沖縄のために役立てるようにもっと自分のスキルを磨きたいと考えていた。

「ちょうど東京オリンピックの開催前で、東京観光財団が外国人に向けた観光ツールを作る人を募集していたんです。 沖縄といえば観光業が重要なので、他県の取り組みを自分の目で見てみたいと思い、転職しました」

 東京観光財団では、主に伊豆諸島や小笠原諸島などを巡り、島の魅力を紹介するリーフレットやYou Tubeに配信する動画などを制作した。

「視察で巡ったどの島も自然が美しく、島で暮らす人たちも含め、私にはすべてが魅力的に見えました。 でも、島の人たちに話をすると、『ここには、何にもないよ』といわれることが多かったんです。それを聞いたとき、この島の人たちの感覚って、私が沖縄に感じる感覚と似ているなぁって。住んでいると当たり前すぎて気付かないことも、外から見るとその良さがはっきりと目に映る。沖縄の外で暮らした経験のある私だからこそ、沖縄のためにできることってあるんじゃないかと思いました」

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2021年に沖縄に戻った畠中さんは、 沖縄の本を揃えた古本屋を始めた。

「昔あった寺子屋のような、 子どもたちが学べる場を作りたいと考えましたが、ちょっとイメージがわかずに悩んでいたときに、本を通して沖縄のことを伝えるのもいいかもって思ったんです。 古本屋さんといっても、店舗を構えるイメージではなく、子供たちが集まりやすい場所にしたかったので、移動できるスタイルを思いつきました。 店名に『パーラー』と付けたのも本屋の敷居を低くしたいという思いからです。『バスに乗ってみたい』といった遊び感覚で来てもらえたらうれしいかな」

 座席の一部を残したり、古材を使って本棚を作るなど、学校の図書室を想い起こすようなどこか懐かしさを感じる空間では、近所の人たちが集まり、楽しそうにおしゃべりをしている。

「ここで初めて出会った人たちが仲良くなったり、ページをめくりながら昔の思い出を話してくれたり。そんな光景を見ていると、お店を始めてよかったなぁと思いますね」

 書棚には、 沖縄関連の本が9割を占め、ジャンルは歴史や工芸、料理や自然、現代の社会をテーマにした本など様々。

「自分で気付いたり、興味を持ったときに手に取ってもらえるように、あえてテーマは絞らないようにしています。お店を始めて分かったことですが、 沖縄のことを学びたいという地元の人が多いことには驚きました。特にアメリカ統治時代に教育を受けてきた私の親世代は、学校で沖縄の歴史を学んでこなかった人が多く、すごく勉強熱心。沖縄を知りたいという人に寄り添えるような本を揃えたいと思います」

 今後は、リクエストがあればお話し会を開くなど、県外や海外で体験したことを言葉でも伝えていきたいという畠中さん。レトロなバスの古書店で学べることは多そうだ。

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畠中 沙幸
北谷町砂辺生まれ。幼少期はアメリカで暮らし、自由な教育スタイルに影響を受ける。アメリカの大学に進学後、教育関係の会社に勤め、その後(公財)東京観光財団に転職。 2021年に沖縄に戻り、「ブックパーラー砂辺書架」を開業。 おすすめの本は、大田昌秀さんの 「沖縄のこころ」。

ブックパーラー砂辺書架
沖縄県北谷町砂辺44
〈Instagram〉bookparlor.shinabi

おきなわいちばVOL82はこちらで購入できます
https://shop.okinawa-ichiba.jp/?pid=178399447

  • 文・ 編集部編集部
  • 写真・G-KEN

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