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【月曜日のてしごと】山本憲卓さん

2023.03.28

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作家さんの作品を紹介するシリーズ第3回目は、陶芸家の山本憲卓さんです。

初めて作品見たときに心を掴まれてしまい、いつかお話を聞きたいと思い、その願いがようやく実現しました!

惹かれた理由を言葉にするのって結構難しくて、かっこよくてドキドするからって表現になっちゃいますが、「自然の美しさを表現したい」って話をきいたときに、あ、ここかもって思いました。

山や海にいくと目に留まるのは、風化した土や岩。波に侵食された絶壁を見て、かっこいいって子供の頃から思っていた。そんな自然というか、地球の美しさをうつわという世界で表現する山本さんに作品に、心がドキドキしてしまいます。

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「おきないちば80 号(沖縄のいいものにて掲載)」

自然の土や石の美しさをうつわで表現

海外の有名レストランのシェフからも高く評価されるなど、料理界からも注目を集める山本憲卓さん。釉薬をかけずに登り窯で焼いた山本さんのうつわは、自然の土のように表情が豊かで、実験的な遊び心が溢れている。

「自分が理想としているのは自然の石や土、そのものを焼き物で再現することです。実際それをやってしまうと、うつわとしては成立しないのかもしれないけれど、自分が感動した自然の姿をどうにしかしてうつわとしてカタチにしていきたい」と話す山本さんは、大学時代から様々な土を焼いて実験を繰り返し、オブジェなどをつくっていた。卒業後は、読谷村の大嶺工房で修業し、7年前に独立したが、工房を出てからは、自分がつくるべきものが見つからず、模索する日々が続いたという。

「工房の仕事が身についていたこともあり、学んだことをそのままやれば、効率良くつくることはできました。でも頭のどこかで迷いがあり、自分の気持ちと向き合うのがしんどかったですね。そんなときに何気なく、沖縄で採れるクチャという泥土を壺に詰め込んで焼いてみたんです。窯を開けたら驚きました。クチャが沸騰して壺から溢れ出し、まるで溶岩のようなカタチに変形していたんです。その姿をみて、忘れていた感動を思い出した。この自然のカタチを自分はつくらないといけないと思うと同時に気持ちも軽くなりました」

沖縄の海岸でよく見られる隆起した岩や、川の流れによって削られた石などをみて感動した気持ちが一気に蘇り、山本さんは作品づくりに没頭した。

「うつわという制約がある中でつくるのは得意ではないけど、料理をするプロの人たちが実際に使って喜んでくれるのはすごくうれしい。うつわに限らず、かっこ良くて削ぎ落としたシンプルなデザインって使いやすいものが多いと思う。そこを目指していきたいですね」

写真の説明

登り窯で焼いたうつわは、土に混ざる石が溶けたり、灰をかぶり、豊かな表情をみせる。右奥が転機となった壺から溢れ出たクチャの塊。

山本憲卓さん.jpg

Profile

三重県生まれ。沖縄県立芸術大学で陶芸を学び、読谷村に窯を構える大嶺實清さんに師事。陶芸家の今村能章さんとは大学の同期。最近は沖縄県立芸術の琉球陶磁器研究会に参加して、登り窯を共有して使えるようにする取り組みにも力を入れている。

〈Instagram〉yamamoto__noritaka

  • 文・ 草々草々
  • 写真・G-KEN

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