1. TOP
  2. 雑誌の記事から / くらし / 食べること / おでかけ / おかいもの
  3. こだわりの珈琲屋のこぼれ話 〜店主の顔を思い浮かべて選ぶ珈琲豆〜

こだわりの珈琲屋のこぼれ話 〜店主の顔を思い浮かべて選ぶ珈琲豆〜

2022.11.04

yamada cofee naha-008.jpg

ある取材で、珈琲屋の店主にお店を始めた経緯を聞いていたら、「始めは珈琲が苦手だったんです」と、ちょっと意表をついた言葉が飛び出して驚いた。器を作るのが好きだから陶芸家、料理を作るのが好きだから料理人・・など、「好き」から仕事につながると思っていたので、その答えに戸惑った。でも実は、同じ話を別の店主からも聞いたことがあった。よくよく話を聞いてみると、苦手だった珈琲だけど、あるときおいしい珈琲と出会ってイメージが変わり、その味を自分でも追求したいという思いにいたったという。

ONI75057.jpg

思い返せば、自分も20代の頃までは珈琲が苦手で炭酸飲料を好んで飲んでいた時期があった。珈琲のイメージといえば、父が毎朝飲む焦げ茶色の液体。子どもの頃に一度飲んでみたけど、恐ろしく苦くて、それ以来口にしたことがなかった。牛乳を入れるとまろやかな味になり飲むことができけど、母から「珈琲を飲みすぎると背が止まる」といわれ、僕と珈琲との距離は遠ざかった。

ONI73384.jpg

好きになったきっかけは、30代手前の頃に飲んだ一杯の珈琲だった。自家焙煎した豆をハンドドリップで淹れてくれた珈琲は、苦味はあるけど、えぐみがなくてとても飲みやすかった。珈琲のイメージが一気に覆され、それ以来僕と珈琲との距離がぐっと縮まり、いろいろな珈琲屋さんを巡るようになった。

ONI73740.jpg

焙煎の仕方で浅煎り、深煎りと味が変化することが分かってからは、ますますのめり込んでいった。珈琲屋を訪れると必ずチェックするのが、豆が並べられている棚。お店によって様々な産地や、焙煎の仕方を変えた豆が置かれていて、まるで本棚を眺めているようにワクワクする。中でも好きなのが店主オリジナルのブレンド豆。そこには、作り手の思いが詰まっていて、どんな味わいなのか、想像するだけで楽しい。

香りや味は豆によって変わるため、家で試してみないと実際はわからないけど、店主と会話を重ねて、今の自分の心の状態を確認してマッチした豆を選ぶ。数がたくさんあるので決めるのに時間がかったりもするけど、その悩むのもまた心地よい時間。少し前まではケニア、ブラジル、エチオピアなど、産地で選ぶことが多かったけど、最近は、店主の焙煎の仕方や、豆に対する熱意を聞いて選ぶことが多くなった。

ONI41569.jpg

自宅においてある豆が少なくなるとソワソワしてくる。今度はどこの店主の珈琲を飲もうかなと、そんなふうに悩むことができるのも、沖縄にたくさん素敵な珈琲屋があるからだ。おきなわいちばの最新号をめくりながら、店主を思い浮かべ次の休みに出かけるお店を探している。

  • 文・ 草々草々
  • 写真・鬼丸昌範 島袋常貴

おすすめ記事

ページトップへ