こだわりの珈琲屋のこぼれ話　ー喫茶店で思い出す父との思い出ー

子どもの頃、父と行った喫茶店の記憶が鮮明に残っている。出不精でパチンコ好きだった父とは、遠出をした記憶はない。休みの日は近所の公園でキャッチボールをしたり、バッティングセンターに行くのが日課でそれが唯一の父と遊んだ記憶。その帰りによく立ち寄ったのが喫茶店だった。ヘビースモーカーだった父の手元にはいつもタバコと灰皿。苦そうな焦げ茶色の珈琲を飲みながら、スポーツ新聞を読んでいた姿が目に焼き付いている。「野球」という唯一の共通点で結ばれていた父が勧めてくれたのは、「ドカベン」や「キャプテン」、「4P田中くん」など野球漫画だった。珈琲をおいしそうに飲む父を横目に、かき氷を食べながら、漫画を読む時間は嫌いではなかった。

今でも昔懐かしい雰囲気の喫茶店に行くと、子どもの頃の思い出が蘇る。沖縄に移り住んでからは喫茶店に行く機会はめっきり減ってしまったが、嘉手納町にある「珈琲喫茶カメシマ」に初めて入ったときに、フワッと子どもの頃の記憶が蘇った。レトロな雰囲気の店内にボーンボーンと鳴り響く古時計がなんだか懐かしく、窓際の席に目を向けると、草野球で活躍していた若かりし頃の父が座っているかのようだった。

ちょっと苦目の深煎り珈琲とあんバターサンドを味わいながら、ふと「元気かな」と、年末に会った、だいぶ年を重ねた父の顔を思い浮かべた。

DATA

珈琲喫茶カメシマ
沖縄県中頭郡嘉手納町嘉手納494-9
https://www.instagram.com/coffeekissa_kameshima/

• 文・ 草々
• 写真・鬼丸昌範