お気に入りの作家もの 木工家具杉のの大人のベンチ

本誌を制作している時に、取材先で作品を買ってしまう・・・というのは、編集部でよくあること。だって、どれもすてきだから。このベンチも67号の「山の楽しみ」で取材した「木工家具 杉の」で私が購入したものだ。

「『大人のベンチ』という名前なんです。フラットな座面に角のある作りが大人向けかなと思って」と作家の杉野さんが教えてくれたこのベンチは、リュウキュウマツで作られたもの。ひょいと持ち運べる軽さで、座るのはもちろん、新しく買った器を置いたり花を飾ってみたりと色んな使い方ができて気に入っている。

作家の杉野さんに初めて会った時、とても落ち着いた佇まいの方だなというのが最初の印象だった。それから何度かやり取りをさせていただいた際に、私の名前（下の名前が彩希なんです）を見て、「僕の娘にも『彩』という字を付けました。女性は結婚すると姓が変わってしまうから、『杉』という字を名前の中に残してあげたいと思って」と話してくれた。そのすてきなエピソードに感動し、私の『彩』という字も父がこだわって付けてくれたものなので、なんだかとても嬉しかったのを覚えている。

凛としているけれど、温かみも持ち合わせている杉野さんの作品は、杉野さん自身の静かな、でも優しい人柄がよく出ていて、作品に触れていると不思議と心が落ち着いてほっとできる気がする。

実は、近々引っ越しをすることになった。新しい部屋に持っていくもので真っ先に思い浮かんだのがこの大人のベンチ。慣れない場所でもこのベンチがあると思うと楽しみになるから、いい作品って凄いなと思う。

• 文・ 彩
• 写真・平良信実