1. TOP
  2. お気に入り / くらし
  3. お気に入りの作家もの「藤本健さんの木の器」

お気に入りの作家もの「藤本健さんの木の器」

2020.06.15

藤本器.jpg

南城市玉城に工房を構える、藤本健さんの木の器が好きだ。私が持っているのは、数年前の作品で、ガジュマルに漆を数回塗った黒い器。ふちの部分はあえてきれいに削ったりせず、木を切り出した時の自然のままのちょっとガタガタした感じをそのまま生かしていて、それが何とも言えない風合いとなって、藤本さんの遊び心を表している。

 この器、我が家でとにかく出番が多い。サラダやスープはもちろんのこと、煮物や炒め物など、和食も中華も何でも合う。果物をそのまま入れておくだけでも何だかキマってしまう。でも何よりこの器が凄いのは、その使い勝手の良さ。木の器というと「じゃぶじゃぶ洗えるの?」という心配や、湿度の高い沖縄では「乾きにくい」「カビやすい」というのが最も気になるところだけれど、藤本さんの器は洗う時にも全く気を使うことなく(というか割れる心配もないので、陶器よりも洗いやすい)、しかも乾きがいい。使う度に「ああ、何て優秀なの」と、どんどん愛着が湧いてきて、やっぱり器は使ってこそその価値がわかる、と実感する。

実はこの器との出会いは、工房のお隣りにある「胃袋」に食事に行った時のこと。店主のあさこさんとお話をしていたら、ひょっこり藤本さんが現れて一緒に雑談をすることに。そのまま食事が終わると営業時間外だというのにわざわざギャラリーを開けて作品を見せてくれた。工房の裏手のちょっと急な斜面を登って、小さな扉を開けた瞬間「欲しい!」と自分の声が頭の中で響き渡った。そして、どれにしようと悩みに悩む私を見かねたのか、嬉しいことに藤本さん本人がこれを選んでくれた。

 それ以来、この器は我が家でまるで家族の一員のようにすっかり馴染んで、いつも食卓に並んでいる。きっと10年後も、20年後も使い続ける、そんな器だ。

  • 文・ ねこどしねこどし

おすすめ記事

ページトップへ