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雑誌ができるとき

2022.09.08

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自分が編集している雑誌の最新号が出来上がったとき、まず最初にすることは「読者のつもりになって」1ページ1ページをじっくり見ること。すると、普通なら「もっとああすればよかった、こうすればよかった」なんて、編集しているときには気がつかなった"ちょっとしたこと"に気がついてしまい、「次にいかそう!」なんて思うのだろうけど、私の場合は全くそんなことがなくて、いつもでき上がった雑誌を見ると「満足」以外の何もない。そして自分に、編集部員に、ホレボレするのだ。

これって、ずいぶん自信家みたいに聞こえてしまうのは重々承知なのだけど、「何かを作りだす」時は、なんだかよくわからないこの「絶対的な自信」みたいなものが重要な気がする。そして、とことん褒め合う、みたいな。

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はるか昔、出版社に就職してすぐの頃、初めて自分が書いた記事が雑誌に載って、本屋さんに並んだときの気持ちは忘れられない。ドキドキして、立ち読みしながら「これ、私よ!」って心の中で思わず叫んでしまう感じ。

編集者やライターならきっとそんな経験は誰にでもあるはずだけど、自分のデスクででき上がった雑誌をパラパラ見るのと、実際に本屋さんに行って並んでいる雑誌を手にとって"立ち読み"するのとでは全く違う。

そして、その場で一気に全部読みきったあと、思わずお金を出して買ってしまう。これって「愛情」以外の何ものでもない。雑誌に対する愛なのか、自分の仕事に対する愛なのか、当時は深く考えたことはなかったけれど、この「愛情」があったからこそ、どんどんいい仕事ができて、いい文章が書けるようになったのだなって今だからこそ思う。

本が好きで、雑誌が好きで、文章を書くことや編集することが好きで、ここまで来た。これまで本当にいろんな仕事をしてきたけれど、今でもこの気持ちは変わらない。どうして変わらないのだろう?と、たまに不思議に思ってしまうこともあるのだけど、「何かを作りだす」ってこういうことなのかもしれないな。この先、自分が何を作りだすことができるのか、いつまでそのエネルギーが続くのか、時々感傷的になったりもしながら、今日もまた編集という仕事を続けている。

  • 文・ ねこどしねこどし

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