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街には美しい本が溢れてる

2021.05.19

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本屋が好きだ。インターネットでさくっと欲しい本を検索したり、電子書籍で読んだりするのはもちろん便利ではあるけれど、休日にじっくり時間をかけて本屋の書棚を一つひとつ見て回る。そんな儀式のような時間の使い方が好き。最初は雑誌のコーナーから。これは仕事半分。とりあえず一列ずつ、素早く見ていく。次は旅のコーナー。実用的なガイドブックはほとんど買わないけれど、いつか行きたい旅先の素敵なガイドブックは全然行く予定もないのに買ってしまう。そして、ワクワクしながらページをめくり、いつか行くかもしれないその場所に想いを馳せて、大抵は行った気になって満足する。

3番目に見て回るのは、料理本のコーナー。写真が美しく、シンプルで、ちょっとエスニックな、自分のレパートリーにはない料理の本が好き。料理のレシピはネットで十分という人は多いけれど、私は断然紙の本がいい。ネットのレシピは必要だから見るもの、でも素敵な料理本は「料理がしたくなる」気分にさせてくれるもの。これって全然違う。

そして、さらに時間があれば、次に見て回るのはデザインや写真集のコーナー。でも沖縄ではここまで揃っている本屋は残念ながらとても少ない。 だから大抵は料理本の後は文芸の書籍コーナーへ行く。悲しいことにここもあまり充実している本屋は沖縄では少ないけれど、それでもこれだけ活字離れが進んでいるというのに次々に発刊される小説の新作とその装丁の美しさにはうっとりせずにはいられない。しかもどの本もすごく軽い。「あ、これも嵩高紙ね」「この紙、なんて質感がいいんだろう」・・。凝った写真集やデザイン本ならともかく、定価1500円くらいの普通の小説の紙がどれもいい。こんなことにいちいち感動しているのは職業柄かもしれないけれど、もしこれまで本の紙質について意識をしたことがなかったら、ぜひ次に本屋に行く時は手に取った本をよく見て、触ってみてほしい。きっとこれまでよりもずっと本を愛しく感じるはず。

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実は本誌「おきなわいちば」も紙にこだわっている。でも贅沢ないい紙を使うことなんてできない私たちは、今使っている紙を決めるときは本当に悩んだ。紙って高い買い物なので、こだわればその分収益に直結する。でも妥協はしたくない。軽くて、質感がよくて、写真をきれいに印刷できて、価格も手頃な、そんな魔法のような紙はないかしら。そして出会ったのが今使用している日本製紙の「b7トラネクスト」という紙。この紙はいわばお洒落な庶民派。竹尾の「ヴァンヌーボ」のように有名デザイナーが監修した、誰もが称賛するストーリーのある紙ではないけれど、地味に私たちのような編集者やデザイナーの「限られた予算の中でいい紙を使いたい」と切実に思っている人たちの強い味方だ。

本が好きだから紙が好きなのか?紙が好きだから本が好きなのか?だんだん分からなくなってくる今日この頃。いつまで経っても電子書籍では本を読む気になれない私。コロナが収束したら本屋めぐりの旅がしたいな。

  • 文・ ねこどしねこどし

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