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第 55 話

いつも旅の途中

[今回の書き手]宮城博史さん
2017.05.01

飛行機から降り立った瞬間眩しい光に包まれた。
見上げると空は厚い雲で覆われているのにその明るさに目を細めてしまう。
太陽の陽射しが強いのだ。海からの風はたっぷりと湿気を含んでいて、
首に巻いていたストールを外した。

十代後半からの長い東京生活に区切りを打って、
久々に沖縄に帰ってきた時の事は今でもよく覚えている。
「これからまた沖縄生活が始まるんだ」と
嬉しいようなそうでないような不思議な感覚だった。

僕にとっての沖縄は、生まれ故郷で身近な土地でありながら、
案外知らない事も多くとらえどころのない存在だった。
美しい自然も、島の食べ物も、独特の音楽も、
生まれた時には日常にすでに横たわっていたそれらは、
特別な事ではなく生活の一部だった。
だからこそ、沖縄でないものに憧れて東京で暮らしていたわけだけれど、
数年前いろいろな契機が重なり沖縄に帰ってくる事になったのだ。

県外での生活が、沖縄の様々な側面を気づくきっかけになった。
ジリジリと身体が焼けてしまいそうな暑さは都会のアスファルトの暑さと全く違うし、
日陰に吹く風はどんな空調の効いた部屋よりも気持ち良い。
個性豊かな沖縄の人々はマイウェイな性格が強く、話していてとても刺激的だ。
(時に話しの筋道を失うけれど、、、)

何よりも「ものづくり」の文化が魅力的だ。
島野菜のような美味しい食文化に始まり、器やガラス、漆などの工芸品や日用品、
衣服やアクセサリーにいたるまで、沖縄は作り手が生み出す「もの」に満ちている。
毎日の必要な多くの物がこの土地で作られている魅力!

作り手と出会う機会も多い。
どのように作られているか、そのストーリーを聞くだけでもワクワクするものだ。
日々の暮らしの中で「もの」と親密な関係性が自然に生まれる。
物に愛着がわき、土地に魅了される。それは新しい出会いであり、
新しい発見であり、新しい生活のリズムに繋がっていく。

沖縄に住んでいるとまるで旅の途中のように感じることがある。
数年前、那覇空港で眩しい光に包まれた時も、訳もなく旅の始まりと似ているなと感じた。
あの感覚は何だろう?それは5年経った今もあまり変わらないかもしれない。
ここでの生活は文化や自然と密接になり、
人との出会いが日々をより楽しいものにさせてくれる。
そして日常の延長線上にいつも旅の感覚がある。

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宮城博史さん
宮城博史Miyagi Hirofumi

沖縄県糸満市出身
2010年東京在住時に沖縄の陶器を取り扱うを設立。
2012年那覇市松尾に器と服のセレクトショップをオープン。
2017年5月をオープン。
沖縄からライフスタイルを発信している。

次回の書き手は
武山忠司さん

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