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第 19 話

生活の柄とマルチーズロック

[今回の書き手]糸満盛仁さん
2014.03.01

 僕は、那覇にある栄町で 生活の柄という居酒屋を営んでいる。店を開いて今年で十一年目に入る。生計はこれで立てているが人生をかけて取り組んでるのが音楽である。十五の頃にギターを鳴らし歌いだしたのをきっかけに、飽きもせず三十年続けている。
 よく、店とバンド、二足の草鞋的な事を言われるが、僕のやりたい事、一つの塊である。音楽に刺激を与えてくれるのが、店での客との会話であったり、愛すべき酔っぱらい達の世界の中から、音が詩が生まれてきたりする。また料理を作る事もバンドと結びつく事が多い。例えば魚がある。和食、フレンチ、イタリアン、いろんな味の付け方で無数に広がっていく。魚というテーマをどうアレンジしていくかだ。僕が作った曲をベース、ギター、ドラム、サックス トランペットを使ってどう味を付け、どうアレンジしていくか、僕にとってこの作業は同じ。つまりマスターになるという事である。
 カウンターの中に立ってる事もステージの上に立ってる事もさほど変わらない。常に客に見られ評価されるという事。手を抜けばすぐに見破られてしまう。こわい事だ。
 それでも続けてこれたのは、この仕事が好きだという事だけだ。適度なプレッシャーは必要で、背中を押してくれる。時々続ける事に疲れたら続けるために休む。人に会う事さえ避ける。エネルギーを使わない。なんにも考えたくない時は、なにもしない。僕は、たまに怠け者と言われる。
 考えがまとまらない時は、ひたすら歩く。
 那覇からオジィーが住んでいるヤンバル奥まで約120キロ、三泊四日かけて歩いた事も何度もある 頭の中のモヤモヤが消え、シンプルな考えだけが残る。かっこつけようとするからゴチャゴチャ飾りをつける。裸の自分に気付く、それが大事な事。まあ、その間、社会的には怠け者だ。
 誰かが言った。強く張った弦は、切れる。弱く張った弦は、音が鳴らない。その通りである。ちょうど良いバランスを自分で見つけなければ、自分がかわいそう。               
 なんか、えらそうな事ばかり言ってすみません。僕は、かけた迷惑を許してくれた人達のやさしさと寛大さに支えられてると思います。  
 歌を歌い、酒のつまみを作る、わがままな酔っぱらいです。まだまだ、道の途中です。千鳥足で歩いて、たまに、すっ転んでも、遠回りしても、明日になればまた、おもしろい事、楽しい事に出逢えると思うし、探すでしょう。その中から、良いアイデアが生まれてきたら最高です。道草と身から出たサビを肴にして、今夜もカリー。

 PS 百聞は一見に如かず
 生活の柄で飲んで、マルチーズロックのライブに遊びに来ませんか? 

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居酒屋 生活の柄 店主の盛仁さんと

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ミュージシャンの盛仁さん。

糸満盛仁さん
糸満盛仁Itoman Morito

1969年生まれ。
2003年8月8日、栄町にて居酒屋 生活の柄を開く。1997年にバンド、マルチーズロックを結成し、地道に独自の世界観で活動を続ける。

これまで日本各地・ヨーロッパ・台湾とライブツアーを行う。
CDアルバム「何度も見たはずの道しるべと逆の方向に進む」「ダウンタウンダンス」をリリース、他オムニバスアルバムにも参加。

次回の書き手は
糸満あかねさん

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