アイデアとセンスが光る料理を"食の素敵空間"で。Kitchen（那覇市安里）

国際通りからほど近い小さな雑居ビルの2階にあるカフェ、「Kitchen」。賑やかな場所にありながらも、店内に一歩入ると、そこは窓から差し込む柔らかな光と心地よい音楽に包まれた落ち着いた空間。ゆったりとした空気が流れていて、ここが都会の真ん中であることを忘れそうになる。







白を基調とした店内は、2人掛けのカウンターと、小さなテーブル席が5つほどあるこじんまりとした雰囲気。店を営むのは、10代の頃から飲食業に携わり、フードコーディネーターでもある沖縄出身の渡嘉敷百合子さんだ。那覇市内でゆっくりとランチやティータイムを楽しめるカフェが少ないと感じ、ならば自分で作ろうと、2015年10月に店をオープンさせた。「フードコーディネーターが提案する食の素敵空間」をコンセプトに、訪れる人に料理の美味しさだけでなく、居心地の良さ、料理の見た目、意外性、驚きなどプラスアルファのものも提供することを心掛けているという。
フードコーディネーターというだけあって、作る料理はどれも彩り鮮やかでちょっとしたアート作品 のよう。
そしてなによりも素晴らしいのは、渡嘉敷さんのアイデアあふれるメニューの面白さだ。






渡嘉敷さんのアイデアが光る代表的なメニューが、創作カルボナーラ。カルボナーラひとつでこんなにバリエーションが作れるなんて！と驚くほど、これまでにさまざまなカルボナーラが登場している。そしてそのすべてが新しいおいしさに出会えるとあって、カルボナーラ目当てに通う人も多いという。


どんなカルボナーラがあるかというと、まずは定番の「しょうゆ味の焼きカルボナーラ」。ネーミングからして興味をそそられるこのカルボナーラは、その名の通り、クリームソースにしょうゆを加え、和風テイストに仕上げた一品だ。意外とも感じられる組み合わせだけれど、これがしっかりとマッチしていて、最後にパスタに焼き目をつけるところもユニーク。普段クリーム系のパスタを食べない人にもおすすめしたい。

2～3ヵ月ごとの期間限定のカルボナーラもあり、こちらは毎回季節を感じられるカルボナーラのバリエーションが楽しめる。これまでに登場したのは、グリーンカレー、ほうれん草と枝豆、クラムチャウダーと味噌、キムチ、桜、こえびとカボチャライムの香りなど、他ではなかなか味わえないようなラインナップ。

Kitchenでいただくカルボナーラは、ソースがなめらかで口当たりが軽い。これも、渡嘉敷さんが、カルボナーラのベースとなる生クリームにこだわり、いくつもの試作を重ねたことで実現させた。

メニューはそのほかにも、週替わりのパスタ、骨なしてびちとトマトを使ったカレー、野菜がたっぷり入ったサンドプレートなど、興味をひかれるものばかり。また、3～4日ごとに違う味が楽しめるチーズケーキやティラミスなどのスイーツも、独自のセンスやアイデアが光る。そして昼間とは違った雰囲気と料理を楽しんでほしいと、月に一度開催している「夜Kitchen」も毎回好評だそう。



ひとつの料理やスイーツを、いくつもの味にアレンジし、常に新しいものを生み出す渡嘉敷さん。初めて訪れる人には驚きや新しい発見があり、常連さんには次訪れる楽しみができる。食への好奇心から生み出されるメニューと、居心地の良さのために細部にまで心を配られた渡嘉敷さんの"Kitchen"は、食を楽しむ幸せを教えてくれるのだ。







• 文・ ずっしー