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おうち時間を楽しむ3冊の本(こぶたのスー編)

2020.07.29

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本を読むのが好きというより、本を読んだ後にあれこれと考えるぼんやりした時間が好きなこぶたのスーです。だから小説やドラマ、映画はハッピーエンドでもバッドエンドでもなく、トゥルーエンドの方がゾクゾクします。その方が物語の核心をついているようで腑に落ちるし、まったく理解できない時でも、そこからどうにかこうにか考えて自分なりに決着づけるのが楽しいのです。

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そんな妄想好きな私が選んだ一冊目はこちら。金子みすゞの童謡集「このみちをゆこうよ」。この本は私の親友からもらったもの。誕生日でもなんでもない普段の日に、これといった理由もないまま、「こぶたらしいから」と言って、わざわざ買ってくれました。でも金子みすゞといえば「みんなちがって、みんないい」、「朝焼け小焼けだ大漁だ」の、2フレーズしかわからない私には、私らしいが正直よくわかりませんでした。だから期待も何もしないまま読み始めました。それがよかった。フラットな気持ちで読んだからこそ、初めて聞こえてくる詩たちがとても新鮮に感じたのを覚えています。なかでも好きなのが「おもちゃのない子が」という詩。

玩具のない子がさみしけりゃ玩具をやったらなおるでしょう
母さんのない子がかなしけりゃ母さんをあげたら嬉しいでしょう
母さんはやさしく髪を撫で玩具は箱からこぼれてて
それで私のさみしいは何を貰うたらなおるでしょう

何かが足りない時、その対象が満たされれば心も満たされる。対象のあるさみしさはすぐに解決できます。反対に、対象のわからないさみしさは何を与えられてもなおらない。それは自分の存在に対するさみしさのように感じます。物理的には満たされているけど、心の孤独さを感じる時が私にもあります。でも、それは誰にでもあって、だからこそ人は、人やものとの繋がりを求めるのだと思います。金子みすゞは目に見えないものを表現するのが本当に上手くて(私が偉そうにすみません)、なんとなく心の奥底にあるぼやっとした感情を言葉であらわしてくれるから、切ないんだけど共鳴できて、少し気持ちを軽くしてくれたりもします。とても不思議な魅力を持った金子みすゞの世界観に触れられるとっておきの一冊です。

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2冊目は、完全に趣味の本になりますが、大好きな斉藤和義の語り起こしエッセイ「斉藤和義本」です。ギターとの出会いから、家族や仲間、猫、エロ、愛と恋についてが飾らない言葉で綴られています。各章の最後には、ライターと編集者の独断と偏見で選んだ話の内容に合う歌詞が掲載されていて、曲の理解がまた深まったりして面白いです。中学生の頃からファンで、よく一人でライブにも行きます。DVDもたくさん持っているのですが、ピーになっている箇所も多く、15歳で初めて行ったライブではトークの内容がさっぱり理解できませんでした。メモ帳とペンを片手に、とにかく聞こえてくる単語をメモしていた自分が懐かしくて可愛く思えます。「大人になった瞬間」を聞かれたら「斉藤和義の下ネタがわかるようになった時」と答えます。自分の成長過程で色んな刺激をくれた彼のブレない芯や飄々としてつかみどころのない所、相反する感情の動きなど、パーソナルな部分が知れて、ますます好きになりました。ずっと結婚したいと思っていましたが(今でも思っている)、父親と同い年だと知った時には衝撃的でした。

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最後に選んだのは、2010年に沖縄興南高校野球部を甲子園春夏連覇に導いた我喜屋優監督の「逆境を生き抜く力」。この本に出会った当時私は崖っぷちに立たされていたのでしょうか、タイトルに惹かれて即買いました。すごい人ということはなんとなく知っていましたが、読み終えた時には「この人についていきたい」と心から思いました。
「どんなに辛い逆境でも、人を強くするためには、『根っこ』を育てることが大切だ」
我喜屋監督のいう「根っこ」とはなにも特別なことではなくて、日頃の小さな努力の積み重ね、例えば「5分前行動を徹底する」、「食事は残さず食べる」といったもので、ついつい怠けたり、忘れたりしがちなことに意識を向けて生きることの大切さを教えてくれます。啓発本は好きでよく読むのですが、押し付けがましいものや綺麗事を並べているように聞こえるものも中にはあって、でも我喜屋監督の言葉はすごく納得がいくし、人としてどう生きるかを体現していて、本当に勉強になることばかりです。

今回この企画のために久しぶりに開いた本たち。改めて読むと、やっぱり面白い!本の内容はもちろんですが、この本に出会った時の私の置かれている環境や心の状態なんかも蘇ってきてなんだかノスタルジーに浸ったり、ちょっと成長したなって感じたり、いやいや何も変わってないやって思ったり...いい意味で色々な感情に振り回されました。読む時期によってもまた解釈が違ってくるから本は楽しい。今度は5年後、30歳になってから開いてみようかな。

  • 文・ こぶたのスーこぶたのスー
  • 写真・平良 信実

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