つくる人と食べる人をつなぐ、暮らしと食のマガジン

おきなわいちばは
3、6、9、12月の5日発行

ここだけの話

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ことの始まりは、おきなわいちば49号の「うつわじまん」の取材でした。

陶・よかりよの店主、八谷明彦さんの

器に対する姿勢と作家さんへの愛情を記事にしたくて

自分が表に出るのは…としぶる八谷さんを口説いて撮影にのぞんだ日…。

 

ビールでもコーヒーでも器の違いで味が違うんだという話のときに

実際に八谷さんがいれてくれたコーヒーをいろいろな器で飲んでびっくり。

コーヒーの風味とか苦味とか、素人の私でもわかるくらいはっきりと違うのです。

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八谷さんの所有のカップで飲み比べ

 

 

写真はそのときの様子。

どんな形の器のコーヒーがどんな風に感じられるのかは

ここでは書きませんが

口の広さを変えた器と、コーヒーと接する面の質感の違いの器で

ぜひ試してみてください。

 

と、まあ、そんなこんなで撮影を終え

デザイナーのちびくじらとカメラマンのツネさんと

お店を後にしようとしたときに

かかってきたのが、八谷さんが心酔する

愛知県で活動する作家のキム・ホノさんからの電話。

 

はたから見ていても明らかに興奮している八谷さんが

電話を切ってから話すことには、

4月に予定されている陶・よかりよでのキム・ホノさんの個展に合わせ

同時期に発行するキム・ホノさんの著作「大坊珈琲の時間」の関連イベントとして

大坊さんを沖縄に招き、キム・ホノさんとのトークイベントをしたいという内容だったのです。

 

大坊さんは自家焙煎、ネルドリップのスタイルで

38年間東京の南青山でお店をやっていましたが、

ビルの取り壊しで、たくさんのファンに惜しまれながら

201312月に店を閉めました。

キム・ホノさんは大坊さんのいれるコーヒーに魅せられ

展示会などで東京にいるときは

店の定位置に陣取り大坊珈琲店で過ごす時間を楽しんでいたそうです。

 

大坊さんとキム・ホノさんの対談を集めた「大坊珈琲の時間」。

おふたりの言葉ひとつひとつが、美しく心にすっと入ってくるような素敵な本です。

 

リアル大坊珈琲の時間が体験できるなんて…。

と、心ときめかせ、ひんやりとした雨の降る土曜の夜

会場に足を運びました。

 

まずは大坊さんのいれたコーヒーを1杯。

ずらりと並んだキム・ホノさんの作品から好みの器を選びます。

 

ネルフィルターにたっぷりの豆を入れ

糸のように細いお湯を

挽いた豆の一粒一粒に行き渡るように丁寧に注ぎます。

息を詰めるように集中した、一連の美しい所作。

見ているこちら側も息を止めてしまっていたのでしょうか。

コーヒーをいれ終わった大坊さんが息を吐いて

肩の力をふうっと抜いたときに目が合い

思わずといった感じで笑顔を交わしたときに

心の奥で通じ合うものを感じました。

何かと真剣に向き合う姿勢は、ただそれだけで伝わるものがあるのだと。

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大坊さんを撮影中のその横

 

 

大坊さんのコーヒーは、これまで出会ったコーヒーとはまったく違い

ぬるいと言えばぬるいのだけれど、心地よくのどに滑り込むぬるさで

ものすごく苦いのに優しくて、甘みがほんのり。

あれからもう随分日がたっているのに

そのときのインパクトは体が覚えているような気がします。

 

ああ、チャンスがあればもう一度飲んでみたい…。

 

 

コーヒーをいただいた後の

大坊さん、キムホノさん、八谷さんのお話がまた面白い。

 

大坊さんとキム・ホノさんの出会い。

お互いに対する思いと敬意。

大坊さんがどんな風にお店をやってきたか

そこでキム・ホノさんの作品がどんな役割を果たしてきたか。

 

誰かから聞いたことではなく、教えられたことでもなく

すべて自分で判断し、基準を作る

自分の物差しを持つ者の対談でした。

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向かって右からキム・ホノさん、大坊さん、八谷さん

 

 

会場を訪れたお客さんの集中力もものすごく

語られる言葉のひと言ももらすまいと

ある種緊張感が漂っていました。

まるで大坊さんの注ぐお湯が

コーヒーの粒の味わいをゆっくり溶かしだすように

言葉がお客さんひとりひとりの心を震わせ

大切なものを気づかせてくれる…、そんな感じ。

 

会場を出るときにはもう雨もやんでいて

大坊さんのコーヒーと温かく心に残るイベントの余韻に浸っていたくて

しっとりとした闇のなか、いつまでも歩いていたい、そんな夜でした。

 

 

 

その横

2015.07.08

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